で作られたプロのスケートボードは何ですか
眼鏡とオタクとスケートボード第5章〜ローカル意識とプロスケーター〜 | boomer | NEWS | スケボー・スケートボード情報サイト-TRANSWORLD WEB
眼鏡とオタクとスケートボード
著者:岡田晋
※05章以外のコラムはこちら
・眼鏡とオタクとスケートボード第1章~幼少期~・~第2章スケートボードとの出会い~
・眼鏡とオタクとスケートボード第3章~眼鏡(オオカミ)少年~
・眼鏡とオタクとスケートボード第4章~本物のスケボーと大矢兄弟~
・眼鏡とオタクとスケートボード第5章~ローカル意識とプロスケーター~
・眼鏡とオタクとスケートボード第6章〜ギブスと眼鏡のシンパシー〜
・眼鏡とオタクとスケートボード第7章〜初めての大会〜
・眼鏡とオタクとスケートボード第8章〜大切な事とNEWTYPEの衝撃〜
・眼鏡とオタクとスケートボード第9章〜初めてのスポンサーとビデオ撮り〜
・眼鏡とオタクとスケートボード第10章 〜目まぐるしく進む展開〜
・眼鏡とオタクとスケートボード第11章 〜少しでも高いレベルへ〜
・眼鏡とオタクとスケートボード第12章 ~等々力ローカルと究極の裏技~
・眼鏡とオタクとスケートボード第13章 ~仲間と一丸となって~
・眼鏡とオタクとスケートボード第14章 ~ついにNEWTYPEへ~
第5章〜ローカル意識とプロスケーター〜「ねえ、君たちさ〜この場所誰から聞いたの?あんま教えないで欲しいんだよね〜。」
なで肩で背の高い、ローカルスケーターの思いも寄らぬ一言に、僕と尚(大矢尚孝)はそれまでの緊張感が一気にピークに達し直立不動で固まっていた。
スケートでオーリーをメイクして以降、僕と尚はお互い家族の用事以外、本当に毎日スケートに明け暮れていた。学校が終わり一目散に帰宅、着替えに5分もかけずに尚の家の前に集合、そこから日が暮れるまでスケートし、尚の兄貴の帰宅を待ってはSKATE VIDEOを鑑賞すると言う日々だった。
そんな、バリスケの日々が始まり2週間目の週末、僕らは尚の兄貴の言う通り日本のプロスケーターが集うと言う駒沢公園に、満を持して向かった訳である。
朝の10時に出発し、車で15分程度の距離を僕らはプッシュで40分近くかけて駒沢に向かった。今考えるともの凄いモチベーションだが、当時の僕らは一分一秒でも多くの時間をスケートボードの上で過ごしたかった。
「うあ〜!!何あれ!!凄げえ!!」
やっとの思いで駒沢公園の西口付近の一角に到着すると、僕の目に飛び込んで来たのは、ビデオの中でしか見た事の無い、たくさんのスケート用に作られたセクションだった。それは手作りの物で、よく見ると至る所に釘が飛び出たり、両端の長さが微� ��に合っていなかったりしていたが、間違いなくそれはスケーターの為に作られた物だと分かった。
そして、その中央に置かれたそれらセクションの中でも比較的新しいクウォーター(湾曲したスケート用のセクション)には、すでに8人位のスケーターが集まりセッションしていた。
「尚どうしよう。。。」
「え〜、、、とえ〜と、、、」
ローカルスポット(すでに顔見知りのスケーターが多く集うスポット)デビューの僕らは、意気揚々と到着したはいいが、その何処となく身内で形成されている雰囲気に圧倒され、どう入って良いのか分からないまましばらく様子を伺っていた。
ラクロスのために作られた機器は何だった?
「あ!!あの人、ここの責任者ぽくない!?」
挙動不審になりながらも、そこに居るスケーターを注意深く伺っていた尚が一人のスケーターを指差した。
身長が高くなで肩で、カーゴパンツにボーダーのポロシャツ姿の高校生位のスケーターが、セクションの横で図面を広げ、なにやら仲間と話していた。
図面を持っている=責任者。かなり安易な発想だったが、とにかく「ここで滑っていいか?」だけでも確認しようと言う事なり、ドキドキしながらそのスケーターが仲間と話し終わるのを待った。
「あ、あ、あの!」
仲間との会話が終わるタイミングを見計らって、ドキドキしながら喋りかけた。そして、「ここ� �滑ってもいいですか?」と言おうとした瞬間、そのなで肩の背の高いスケーターに、
「ねえ、君たちさ〜この場所誰から聞いたの?あんま人に教えて欲しくないんだよね〜。」とかなり迷惑そうに言い放たれた。
僕と尚はその一言に一瞬で凍り付いた。その当時、スケーターのローカル意識は異常なまでに強く、外から入ってくる物を排除しようと言う保守的な意識がとても強かった。それと同時に新入りのスケーターに対してはそのスケーターが本気でスケートをしているのか、スキルは自分達よりあるのかどうかをあからさまなまでに判断してから迎え入れるかを決めると言う、中に入るまでに何段階ものハードルが設けられていた。
何よりも彼らは自分達で作ったセクションを何処のスケーターかも分からない 輩に壊されたり、盗まれたりするのをことのほか警戒していた。そして現にそんな事が平気で起こる様な時代でもあった。
「いや、あの僕の兄貴が教えてくれて、えと、、、」
尚が今にも泣き出しそうな声で一杯一杯になりながらそう伝えると、
「色んな所で噂になって誰彼構わず滑りにくるとすぐにセクション壊れちゃうからさ〜。これも最近みんなでお金出しあって作ったばっかりだからさ〜。」
と、みんなが攻めている中央のクウォーターを指差した。
雰囲気と言い方がとにかく威圧的で最初ビックリしたが、彼の言っている事は間違っていなかった。
「絶対に誰にも言いません!!!!」
ここまで来てはいそうですかと帰る訳にはいかない!必死になって僕らが食らいつくと、
「あ� �、じゃ〜邪魔だけはしないでね、、、」
と、半ば諦めたかの様に彼はまた図面に目を戻した。
そう、このなで肩で背の高いスケーターこそ、チーム「NEWTYPE」のオリジナルメンバー、赤地くん(赤地正光)だった。ただ僕らが彼の素性について理解するのはもう少し後の話である。
「尚!!超怖え〜よ!!ここ!!!」
彼に声が届かない所まで離れてから二人でそう言いあった。とにかく、滑っても問題は無さそうだ、そう結論付けた僕たちは言われた通り邪魔にならない様に少し遠巻きに滑り始めた。
どのセクションも未知の物ばかりで僕らが太刀打ち出来るもの等無かったが、端っこに置いてあった、マニュアル台(スケボーでウィリーする為の低い台)とカーブボックス(角に鉄パイプがはめて あるスライドやグラインドトリックをする箱)を登ったり下りたりして遊んでいると、またもや尚が興奮し始めた。
世紀の最上位サッカーパーソナリティ
「やばい!!あれ!!山田ゆういちろうくんだ!!!絶対そうだよ!!Fineでみたことあるよ!!!プロだ!!プロが来た!!」
プロと言う言葉に反応して尚の視線の先を見ると、ローカルの集団と面識はありつつも、一人自由にスポット全体をゆらゆら滑るスケーターが見えた。年は高校生よりももう少し上、ロングへヤーでハーフパンツにアロハシャツ姿の彼は、ストイックなローカル意識等気にも止めない素振りでまるで風の様に自由に滑っていた。
「あの人、Alvaってブランドからスポンサーされてて、Fineでモデルやってるだよ!!うあ〜どうしよう!!」
何時も冷静な尚が、見た事無い程興奮している姿に、その人が凄い 事は良く分かったが、何か聞こうとした時にはすでに尚はゆういちろうくんの方に吸い寄せられる様にプッシュしている所だった。
「尚!待って〜〜!!」
置いてかれまいと僕も急いで後を追った。
「あの!!山田ゆういちろうさんですよね!!」
追いついた時には、もう尚は彼に話しかけていた。
「あ〜、そうだけど〜。君たち僕の事知ってるの〜?」
背も高く、顔立ちはまるで外人の様なそのスケーターは滑り以上にメローで柔らかい口調でそう答えた。
「はい!!!fine何時も見てます!!僕、ファンなんです!!サイン下さい!!」
尚の見た事もないミーハー具合に若干引いたがそのスケーターは笑顔で「僕ので良ければ書くよ〜。」とゆる〜いトーンのまま快諾してくれた。< /p>
「じゃあ!!あの、あれどうしよう紙がない、、え〜とえ〜と、あ!!コレに書いて下さい!!」
驚く事に、テンパリながら財布の中身をあさっていた尚がサイン色紙代わりに差し出したのは、なけなしの千円札だった。
「え〜〜〜!!!」
僕はあまりの尚のテンパリ具合に思わず声を上げてしまったが、驚いたのはゆういちろうくんも一緒だった。
「え〜、本当に良いの〜。俺、千円札にサイン書くのなんて初めてだよ〜。」
と、照れくさそうにつぶやいた。
こうして、千円札に書かれたサインを尚が嬉しそうに眺めていると、
「ね〜、お礼にスケート教えてあげるよ〜〜〜。」
と、彼の方から誘ってくれた。彼は誰に対してもフラットに話しかけるのだろう。そして、上手かろうが上手く� �かろうが彼はそんな事気にもせず、その時その時、目の前に現れたスケーターと純粋にスケートを楽しんでいる様に見えた。これが、僕らが初めて出会ったプロスケーターの印象だった。それは、ストイックにスケートと向かい合うローカルスケーターとはあまりにも対照的なものだった。
「今はコレが一番おしゃれだよ〜〜。」
彼はそう言うと、僕たちでも出来るレベルのトリックを選んでは優しく教えてくれた。初めて来たローカルスポット、入りずらい雰囲気の中、どうして良いのか分からない僕たちを優しく包み込む様にゆういちろうくんは迎え入れてくれた。僕らは純粋に幸せだった。そして何よりその相手がプロスケーターだという事が夢のようだった。
しばらくして、ゆういちろうくんはまたふ らふら〜と何処かへ消えてしまったが別れ際最後に尚がこう言った。
「ゆういちろうさん、外人みたいっすね!!」
スポーツクリケット[再生方法]きっと、尚は顔立ちだけではなく彼の人当たりや雰囲気を指してそう言ったのだろう。
「あ〜、俺、外人だからさ〜〜〜!」
それに対し彼はそう言うとそのまま公園の向こうにゆらゆらと消えて行った。
その後、「俺、外人だからさ〜!」のフレーズが僕らの中で流行った事は言うまでもない。
ゆういちろうくんが帰った後、僕らは100円で買える限り大きなパックの麦茶を飲みながら、中央のクウォーターでセッションするスケーター達を眺めていた。
彼らのスケートはゆういちろうくんとは違い、ストイックで遠巻きに眺める僕らの所にまでじわじわと熱が伝わってくるような物だった。
そして、彼らのスケートのレベ� ��はもちろん、何より僕の心をかき立てたのは、彼らのそのセッションする姿だった。
それぞれが、自分の出来る技からならして行き、誰か一人が新しい技にチャレンジすると、それが出来ても出来なくてもそこに居るスケーター全員の熱がウワっと上がり、それに続く様に次々とクウォーターに向かって新たなトリックをメイクすべくスケーター達が突っ込んで行く。中には思いっきりスラムするスケーターも居るが、むしろ、その事によってさらにそのセッションは盛り上がっている様に見えた。
気が付けば、彼らのセッションを僕と尚は、食い入る様に見つめていた。彼らの姿は、自分の限界は元より、全員でスケートシーン全体の限界の壁を突破しようとしている様にさえ見えた。
いつしか、それを見� �いた僕らはそんな限界を超える瞬間の立会人の様な気持ちでそのセッションに感情移入していた。
「あ!!おしい!!」
「行け!!!」
何かが目の前で起きそうな気がする、そんな期待と緊張感の中、尚がまたしても何かに気付いた。
「あ!岡田くん!あれ見て!!米坂淳之介だ!!」
ちょうどクウォーターの向こう側から、僕より少し年上に見える若いスケーターがコーディロイパンツに古着のTシャツ、ハンチングと言う当時のスケーターには珍しいモッズスタイルで飄々と現れ、緊張感と熱がまさにピークになろうとしているセッションの輪の中へ加わった。
「あの人、岡田くんとタメだよ!!今日本のスケーターの若手NO1って言われている人だよ!!」
「同い年」その言葉に僕は異� ��なまでに反応した。彼の立ち振る舞い、落ち着きやファッションはどう見ても僕より年上にしか見えなかったし、(それに比べ僕は相変わらずPRO-KEDSにケミカルジーズンに眼鏡。)何より、彼の登場で今まで以上にそこでセッションしていたスケーターの熱がグンと上がるのが分かった。
あんなに威圧的だった赤地くんや他の淳之介より年上のスケーター達も淳之介に対しては同等かそれ以上の眼差しで彼に対応していた。遠巻きに見ていた僕らでさえ彼がその場の中心人物である事が分かるくらいだった。
今まさに、限界を超える為に必要な最も強力な味方が揃ったかの様にセッションしていたスケーター達はそれまで以上に躍動し始めた。
僕らの期待も否応無く高まり、淳之介の一挙一頭足に息をのんで注目した 。そんな周りの期待を知ってか知らずか、彼は周りの期待に反比例するように落ち着きを増している様に見えた。
(ガッ!!)
ついに彼がクウォーターに向かってプッシュし始めた。その踵から足の裏全部を使いプッシュする姿と、それに合せて動く柔らかい膝と粘りのある腰を使った独特なプッシュは明らかに他のスケーターとは一線を画していた。
そして、アップも無しに彼のかましたフロントエアーは見た事も無い高さの軌道を描き、まるで吸い寄せられる様にRに着地した。
「イエーーーー!!!」
そこに居たスケーター全員が大声で叫んだ。
淳之介は、一発でそこに居るスケーター全員の想像を軽々と越えて見せたのだ。周りの興奮をよそに、彼は相変わらず落ち着きを崩さずにスケートを続けていたが、僕と尚はそんなセッションの予想だにしない� ��末に驚きを隠せなかった。
「今日は凄い一日だったよ!!」
その日、地元に帰り尚の兄貴の部屋で、僕らは今日目にした刺激的な出来事を事細かく尚の兄貴に報告した。尚の兄貴はスケートの魅力にのめり込んで行く僕らを嬉しそうに終始うなずきながら、興味深そうに聞き入っていた。そして、全ての報告が終わると、尚兄は何かを自分の中で納得した様に僕らにこう告げた。
「今月、高井戸の高架下でカリフォルニアストリートの大会がある!二人とも行きたいか?」
カリフォルニアストリートとは、当時、毎月高井戸と新宿のジャブ池で大会を開催している代官山にある老舗のスケートショップの事で、ライダーへのサポートもいち早く行なっている東京を代表するスケートショップの一つだった� ��
僕らは、もちろんその誘いを喜んで受けた。
帰り道、僕は米坂淳之介の事を考えていた。あれだけのスキルと評価を得ている同い年、僕も彼の様になれるのだろうか?思えばこの日から僕は米坂淳之介の事をすこしずつ意識し始めていたのかもしれない。ただ、自分が彼と良きチームメイトとしてライバルとして今後、切磋琢磨して行く事になろうとは夢にも思っていなかった。
僕は少しずつだが着実にスケートの世界に飲み込まれようとしていた。中2のまだ夏前の話である。
つづく
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